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モダン・ジャズの特色は、演奏されているとき、その根底に、きいている人たちの気持ちをゆったりとリラックスさせるものが流れていることです。ジャズを演奏したり研究したりしている人たちは、英語の表現の仕方を、そのまま使うことが多くて、気持ちがくつろぐことを〈リラックスする〉と普通いっていますが、リラックスしながらも気持ちはうきうきとはずんでくるでしょう。〈よくスイングするね〉といいますが、これもジャズの分野での特別な言いかたであって、スイングするからこそ、きいているほうでも気持ちが興奮していくわけです。ちょっと変ないいかたですが、いいモダン・ジャズをきいているとき、急になにか仕事がしたくなってジーッとしてはいられない気持ちになったことはありませんか。雨がジトジト降っていたのが急にやんで空が明るくなったとき、ジーッとしていられなくなって散歩に出たくなるでしょう。こんなときの気持ちとも似ているのですが、それがもっと強くはたらきかけてくるわけです。というのも演奏がリラックスさせながらスイングしているからであって、それと同時にもうひとつエモーションで訴えかけながら、その演奏にとけこませようとしているからです。よく〈シビれちゃう〉といいますが、これなどジャズからきた表現なんですね。 (植草甚一) リラックスしながらも気持ちはうきうき・・とは、まるでモーターサイクル・ツーリングのようだ。いうまでもないが、ライディングとは、認知・判断・操作の繰り返しであり、その作業が円滑に行えていると〈リラックス〉した気分になる。そして眼前に拡がるあふれんばかりの臨場感、突き抜けていく風の音や、股下でうなりをあげるエンジン音などは〈エモーション〉で訴えかけ、ライダーは、マシンとともに自分で自分を導いた世界に〈シビれる〉のだ。いつかの週末近い日の午後だった、雨がジトジト降っていたのがやんで空が明るくなると、すぐにでもツーリングに出たくなっていても立ってもいられない気持ちになった。そのときなにかの音楽が、心の内側で流れ出したような感覚があったのだが、モダン・ジャズだったのだろうか。片岡さんは、この「心の内側」についてエッセイ集「アップル・サイダーと彼女」で次のように述べている。 (yossy) あのすさまじい機械にまたがって風を切りつつ、右に左にリーンしながら走っていく快感にもし実用的な価値があるとするなら、それはライダーひとりひとりの心の内側での出来事に限定されてくるように、ぼくは感じる。 (片岡義男) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考 モダン・ジャズの勉強をしよう 植草甚一ジャズ・エッセイ大全1 高平哲郎 編・解説 晶文社 アップル・サイダーと彼女 片岡義男 著 角川文庫 |
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